私が思う、究極の愛の答え。

6/6
前へ
/19ページ
次へ
にゃんにゃんは意地っ張りだと思う。 自分で言ったくせに涙を堪えてる私を見て、にゃんにゃんは目をただ細めただけだった。 悲しくて、寂しくて、絶望した様な。 「優ちゃんじゃない……」 私を見つめて、にゃんにゃんは悲しそうに呟いた。 私が好きな優ちゃんは、そんなこと言わない。…… グサリと、痛いところを突かれた。私の目からは、大粒の涙が流れた。 だって……、 "私達の恋愛"と"秋葉原家の今後"。 そんな2つを天秤にかけられて、長女様の専属執事頭の身で首を横に振れる訳がない。私は身を引く他に選択肢は無い。 「にゃんにゃんは、私の恋人である前にお嬢様で、秋葉原家のご長女様で……」 「違うよ、そんなんじゃなくて」 にゃんにゃんは私に背を向けた。 肩が震えてる。栗毛色の美しい髪もかすかに揺れている。 涙を流しているかどうかは、私には見えない。 何せ、にゃんにゃんは頑固である。 「そんなことぜーんぶ無しでさ、優ちゃんはさ……」 「……、私を愛してた?」 ……そんな質問、しないで。 私はただそう言い残して、部屋を出た。 そんなことあるはずないのだから、にゃんにゃんがただの女のコなんてあるはずないのだから。 空想の夢物語を見たって、悲しいだけで。 ほら、アイツの軽やかな足音が近づいて来るだけで。 ……肩にかすかな重み。ふわっと香る香水は、気持ち悪いほどに甘ったるい。 「私のニャロちゃんを、泣かせないでくれる?」 勝ち誇った笑みを私に向けて、奴は部屋に入って行った。 私に止める権利は無い。 扉の前で深く一礼して、私はくるりと方向を変えた。 赤い絨毯の長い廊下、先が見えない。 軽く目をこすると、涙が視界を遮っていたのだと気付いた。 「…これで良かったんだ。」 苦笑混じりに、私は涙を拭った。 私は初めて、愛する人のために自分を捨てる。 <私が思う、究極の愛の答え。fin>
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

295人が本棚に入れています
本棚に追加