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一ヶ月後だって。
部屋に戻った途端、私は苦笑まじりに呟いた。
それがにゃんにゃんを更に追い詰める発言だって、分かってた。追い詰めないと、これから私がすることに反対されそうな気がしたから。
にゃんにゃんが入ったことを確認して、扉を閉める。
落胆した背中を、私は駆け寄って抱き締めた。
こんな行為はもう最後かもな、なんて。心の中で苦笑まじりに呟いた。
「優子……、陽菜どうしたらいいの…?」
一族と愛に挟まれて、にゃんにゃんはもう崖の上に居た。
今まで順調に愛し合って、部屋に戻ればイチャついて、私が先にキスして…。昨日までがもう夢物語になっていて、私は目を閉じた。
そう、昨日だって……
"優ちゃんやだー!"
って、私の絡まる腕を掴んで離そうとするにゃんにゃん。
こんなとき私は決まってニヤリ、とする。
にゃんにゃんが私に言う「やだ」は、「して」の意味だって分かってるから。
私が唇を尖らして詰め寄ったら、にゃんにゃんはいつも「やだ」って言う。
だから私はいつも、ニヤニヤしながらキスをする。
やだ、と私を見つめる上目遣いが誘ってる様にしか見えなくて。にゃんにゃんの「やだ」は、私の大好物である。
「優ちゃんじゃなきゃ、やだ……」
でも今日ばかりは、にゃんにゃんの「やだ」、は訳が違った。
私の腕の中で、震える声でそう言った。
"優ちゃんじゃなきゃ、やだ"
この言葉は、いつもなら私を燃え上がらせるには十分の着火材だが、今日は違う。
私の頬に、冷たい涙が伝った。
「私も。にゃんにゃんの隣は私じゃなきゃ、やだよ。」
「優ちゃ……っ」
「でも、」
私の方を振り返ったにゃんにゃんを、慌てて抱き締めた。
胸に私の顔をうずめてしまえば、にゃんにゃんの顔を見なくて済む。
悲しむ顔、……涙なんて見せられたら私は、もう無理だ。
「仕方ない、よ……。」
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