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「……琴乃?どうしたの?」
心配そうに、和月が私の顔を覗きこむ。
気付かれないように頑張って笑顔をつくった。ちゃんと笑えてるかな。
「何でもないよ。和月に彼女いるのが意外だっだけ」
「酷いなあ…琴乃は彼氏いないの?」
心臓を鷲掴みにされたみたいに、胸が痛む。
どうしてそんなこと聞くんだろう。
「彼氏とか、いらないし。彼女と上手くやりなよ。んじゃ、私ちょっとトイレ行ってくるからまたあとでね」
トイレで、個室に入って、へたりこんで。ただボーッとした。
泣くわけでも、嘆くわけでもなく、ただ。何も考えないでいたかった。
それから、しばらくしてから教室に戻って。
私はなるべくいつも通りにふるまった。
あの時に会わなければ、友達になんてならなければ、なんてことが何度も頭を横切る。
それを振り払うように頭を振りながら、私はまたボーッとした。
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