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「あ、来た来た。何処から行こっか?」
ほら、と笑って和月が手を差し出してくる。
昨夜のメールは、二人で街に遊びに行こうって内容だった。
私に元気がないのを気遣ってだろうし、やっぱり少し嬉しかったから行くことにした。
…とは言っても、恋人でもないのに手を繋ぐってダメでしょ。
手をとらずにいると、不思議がって向こうから手をとってきた。頭が鈍いのかわからないが、ちょっと強引に引っ張られる。
彼女にバレたらどうする気なんだ。
「ちょ、和月!彼女いるってのに……」
「ここんとこずっと、元気なかったから。……友達が元気なかったら、心配するのは当たり前だろ。
だから今日は何も考えずにパーッと遊んでさ、嫌なこと忘れてもらいたいんだよね」
いつもの大好きな笑みと優しい言葉に、胸が高鳴る。でも、嬉しいかと言われると微妙。
友達、か。
「ありがと和月……じゃあ、お好み焼き食べたい」
悪戯っぽく笑ってみせると、和月はパッと目を輝かせて私を引っ張った。嬉しそうな笑みに、私もつられて笑う。
和月の言う通り、何も気にせずに楽しもうかな。
ぎゅ、と手を握りなおし、街の中二人で遊びまわる。
まるで、恋人みたいで。
幸せな気分だった。
幸せ過ぎて、くらくらしそう。
後ろをつけてきていた影には全く気付かずに、私達は1日思いきり楽しんで帰った。
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