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〈和月視点〉
今日の朝、琴乃とたまたま会って一緒に登校していたら、視線を感じた。
その方向へ顔を向けると、見慣れた子が慌てて隠れた。
―――理沙、だ。
付き合った頃からだったが、最近はもっと酷く独占欲が強い。クラスの女子と少し話すだけでいちいち怒ってくる。
琴乃のことも嫌っているらしい。
もともと、俺は理沙に興味がなかった。
琴乃のことが好きだったけど、彼女は俺を友人としか思っていないようだから。
理沙に告白された時、琴乃を諦めるために了承してしまった。そこそこ可愛い子だし、この子を俺は本当に好きになるかもしれない、なんて勝手に思って。
それが、間違いだなんて気付かずに。
付き合ってからは毎日のようにメールや電話ざんまいで正直参ってる。
それに。
琴乃と過ごす時が一番、理沙からのストレスを忘れられた。
むしろ、ずっと琴乃といたい。過ごしたい。
ただ…やっぱり向こうは俺のことを友人としか思ってないだろうから。俺も友人として振る舞ってた。
だけど、好きだという気持ちは膨れ上がるだけだった。
「あれ、保志?」
「ん?竹田か、どうした」
同じく帰宅部の竹田が、驚いた顔をして俺を見ていた。
「お前、彼女とすれ違ったのか」
「……は?」
「お前の彼女、俺らのクラスに入ってったからさ。行ってあげろよ」
「あ、ああ」
嫌な予感が、した。
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