1人が本棚に入れています
本棚に追加
「どこ行った?」
気づけば、僕は特に何も考えもせず、
ただ、無意識にあの鳥を追いかけていた。
「どっか行っちゃったか―――。」
珍しい鳥を、もう一度見れたら。
きっと、そんな興味本位で追いかけたくらいの気持ちだったのだろう。
あきらめて帰ろうとした時、
サァ…―――。
僕の住む都会。
そんな所では、聞いたことのないような、
草のすれ合う音。
風に乗って、草の匂いがしてきた。
「ここ…は…。」
鳥に夢中だった僕は、今、やっと周りを確認する。
果てしなく続きそうな草原。
一つ一つの草や花。葉が輝いているような景色。
周りには、木が隙間のないほどに立っている。
けれど、決して、邪魔なんかではない。
むしろ、無ければならない。
無ければ、この場所が成り立たないような、
そんな気がした。
まさか、
まさか、こんな汚い、都会の一角に、
こんな場所があったなんて初めて知った。
きっと、ほかの人は誰も知らないのだろう。
こんなにも、綺麗な場所だ。
人がいくらいったって、おかしくない。
でも、誰も知らないなんて。
まぁ、あんなに木がある所をわざわざ入ってくる人は、
少なくとも、こんなところにはいないか…。
最初のコメントを投稿しよう!