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「いったぁ~」
カインが左肩を押さえながらその場にへたりこんだ
レイミーの降り下ろした棍が、カインの横凪ぎに振るった剣より速く彼の左肩を打った為である
よほど痛いのか起き上がる素振りも見せず、肩を押さえたまま座り込んでいる
レイミーはカインの状態を確認すると棍を下ろした
「また、あたしの勝ちね」
緊張の糸が切れたように可愛らしい笑みを見せるレイミー
カインは溜め息を吐いて、肩を落とした
「その様だね。
はぁ~ぁ、今日こそは勝てると思ったのにな~」
「………ねぇ?気になる事が有るんだけど、聞いても良い?」
少し間をあけ、レイミーが気まずそうな表情で遠慮気味に口を開いた
「ん?………良いよ?どうしたの?」
カインは首を傾げながら質問を許可する
レイミーはやはり気まずそうな表情をしていた
「うん……その……どうしてあの時、棍を渡してくれたのかな~……って」
いつもはっきりと物を言う彼女にしては随分歯切れが悪い
カインはそれを不思議に思わなかった訳ではないが、先に質問に答える事にした
「あぁ、その事ね。
別に親切心で渡した訳じゃ無いよ。
レイミーが素手だとボクの勝率が低くなるからね。
武器同士の戦いならまだ勝ち目はあるかな~なんて思ったんだよ」
レイミーはカインが棍を自分に返したから負けた
要するに戦いを対等にしてくれたにも関わらず思いっきり左肩を打ってしまった事に罪悪感を感じていたのだ
しかし、カインの答えを聞いて肩の荷が降りた様にいつものレイミーに戻った
「なるほど!そう言う事ね。
じゃあ最後に一つ、さっきどうして避けてから反撃しなかったの?
カインの実力ならあれくらい避けれると思ったんだけど……」
今回はただ純粋に気になっているだけなのか顎に人差し指を置いて首を傾げている
その仕草が可愛くてカインはクスリと笑った
「それはね、痛みから体が動かなかったんだよ」
カインは苦笑を浮かべた後、ちろっと舌を出す
「でも、ただ負けるのはちょっと情けないから悪あがきしてみた」
どこか茶目っ気を感じさせるカインにレイミーもまた苦笑いを浮かべるのであった
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