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「こらぁ~~、待ちなさぁ~い」
柔らかな朝日が朝の始まりを告げる山奥の小さな村に、どこにいても聞こえてくる様な少女の大声が響き渡る
木々に止まっていた鳥達が一斉に飛び立ち、村の動物達が飛び起きた
寝ていた村人はその大声で目を覚まし、既に起きていた村人は「またか」と言った具合で朝のティータイムを楽しんでいたのであった
「朝からそんな大声を出してると近所迷惑だぞ!」
茶色の長い髪を後ろで束ねてポニーテールにしている少女に追われている二人の少年の内、赤い髪を短く切り揃えた少年が必死の形相で駆けながら言う
「誰のせいで朝から大声を出しながら追いかけっこしなきゃならなくなったと思ってるの!
いいから待ちなさ~い!!」
少女は頬を真っ赤にしながら逃げる二人を追いかけている
追いかけっこをしている三人は小石が転がっている整備のされていない道を駆け、木々の合間を抜けながら問答していた
「俺は何も悪いことはしてないだろうが」
「あはははは。
やっぱりレイミーとのかけっこは楽しいなぁ~」
陽光を反射する程に見事な長めの黒髪をした少年が、隣を走る少年の嘆きを打ち消すかの様に明るく笑う
「おい、こらカイン!
お前笑ってないでこの状況を何とかしろ!」
ポニーテールの少女、レイミーに追われていながら楽しげな笑顔を浮かべるカインの言葉に、隣で並走する少年は額に青筋を浮かべて怒鳴り付けるが、当のカインは首を傾げる
「どうして?」
「どうして?………じゃない!
お前が原因で俺まで追われる羽目になっちまったじゃねえか」
カインの行いにより、巻き添えを喰らったらしい少年は怒り心頭の様子でカインに喰って掛かるが、カインは気にした風も無くただ笑うだけだ
人差し指を顎に当て、考えている素振りを見せる
どうやら心当たりがあるようで、納得したと言う顔になってカインは答えた
「……確かにそうかも。
じゃあ、何とかしてみるよ。
その間にラナンは逃げてて」
「あぁ、気を付けてな」
「あい」
カインはラナンの言葉に、何故か敬礼をすると向きを変え、レイミーと対峙する
大分距離が開いた為、二人の会話は聞こえ辛かったが、変化は突然現れた
カインが妙に楽しそうに笑いながら猛スピードでラナンの隣に追い付いてきたのだ
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