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大きく開いていた筈の距離をあっという間に詰め、隣に並んだ親友に驚きを隠し得ないが、説得するために立ち止まったはずのカインが、何故また逃げ出したのか気になる所だ
ラナンはその原因を推測するため、後ろを振り向くと驚愕の表情を浮かべた
レイミーが先程よりも怒った状態で追い掛けて来ていたからである
しかし、両者間の距離は先程とあまり変わらなかった
「カイン、お前、レイミーに何て言ったんだ?
あいつ、さっきよりも怒ってる感じだぞ?」
考えても答えが出そうにないラナンは直接カインに聞く事にした
カインは相変わらず楽しそうに笑いながら駆けている
「ん?………あぁ、そんなに怒ってるとお嫁にいけなくなっちゃうよ?って言ったんだよ?………どうしたの?」
見るとラナンは唖然としながら肩を震わしている
走りながら器用に深呼吸をすると凄まじい剣幕で怒鳴り付けた
「ドアホぉぉぉぉ!?
火に油を注ぐ奴があるかぁぁあぁぁ!」
カインは両耳を手で塞ぎ、楽しそうな笑顔で追い縋るレイミーからラナンと共に逃げて行くのだった
舗装がなされていない村の道を二、三周程、時間にして一時間程の追いかけっこはようやく終わりを見せていた
ラナンの体力が尽きてしまいレイミーに捕まってしまったのだ
親友を置いて一人で逃げる訳にもいかず、カインも同じく逃げるのをやめ、早朝からの追いかけっこは終わったのである
かなり息切れしているラナンとは対照的にカインとレイミーは平然としている
疲れと言う物を知らないのだろうか
太陽が完全にその姿を見せた今、多少の暑苦しさを紛らわす為、三人は木陰にいた
レイミーはご立腹なのか腕を胸の前で組み、仁王立ちしている
カインとラナンはと言うと綺麗に刈り揃えられた芝生の上で正座させられていた
何とも言えない沈黙が場を支配する中、溜め息と共にレイミーが口を開く
「ねぇ?
あんた達はどうしてあんな事をしたの?」
「ちょっ!おまっ!!
俺は何もしていないだろうがっ」
「じゃあ、どうしてカインを止めなかったの?
そして何故あたしから逃げたの?」
「うっ!」
凄みのある笑顔で問い詰める様な口調のレイミーの言葉にすぐさま反論するラナン
確かに彼の言う通りなのだろうが、彼女はそれを認める積もりは無いようだ
レイミーの笑顔での詰問は思いの外迫力があり、思わず口をつぐんでしまった
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