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気付くとカインは右手に剣を持ち、構えていた
レイミーが気持ちの切り替えをしている時に剣を拾っていたらしい
レイミーの棍はカインに投げ飛ばされた為、彼の後ろに落ちている
「カイン!あんたは本当に強くなったわね。
さっきの攻防は見事だったわ!」
レイミーは真剣な表情でカインに話し掛けた
目線はカインの後ろにある棍に注がれているが、カインに対する称賛の言葉に嘘は無い
カインはクスリと笑った
「それはどうも。
それにしてもレイミーはやっぱり強いね~。
ボクはさっきので勝ったと思ったんだけどね」
「そう?ありがと」
レイミーは挑発とも誉め言葉とも取れるカインの言葉を聞き流し、どうやって攻めるかを考えているようだ
「そろそろ決着を着けるとしよっか?」
カインはそう言うと右側に落ちている棍を拾い上げ、レイミーに向かって投げ渡した
「……あっ、うん…ありがとう」
レイミーは棍を受け取ると礼を言い、すぐに構え直した
それからは言葉を発する事なく相手の出方を窺う
重苦しい沈黙が、その場を支配した
「行くわよ!」
短い言葉と共に先に動いたのはレイミーだった
カインとの距離を素早く縮め、棍を背中ごしに両手で持ち、自らの間合いに入ったと同時に左手を離す
急に支えを失った棍は残った右手の力によって円を描く様に右側からカインに襲い掛かった
カインは左側から迫る棍を体制を低くして避け、それが通過した所で剣を当て、棍が遠ざかる力に勢いをつけた
「きゃっ!」
遠心力によりレイミーの体も棍に引っ張られ、小さく悲鳴を上げる
カインは体制を崩しているレイミーの頭上に剣を降り下ろした
レイミーは間一髪、それを左に避けると崩れた体制のまま、左回し蹴りを放つ
それは彼女の攻撃の方が速いと感じたカインが、両手を胸の前で交差させた所にまるで吸い込まれるかの様に綺麗に決まる
「うっ!」
崩れた体制から放たれたにも関わらず、カインは後方に大きく吹き飛ばされ、背中から木にぶつかり小さく呻く
痛む両手と背中に力を込めて剣を構え直して立ち上がった瞬間、レイミーが目の前で棍を降り下ろしているのが目に入ってくる
体が痺れてしばらく動けなかった時に距離を詰めてきたのだろう
レイミーの棍が迫る中、カインも負けじと剣を横凪ぎに振るう
次の瞬間、広場に決着が着いた事を表す大きな音が響き渡るのだった
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