● ストール

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  ―― セレス執務室 珍しく楓様が私をお呼びになった。 確か待ち合わせ場所は私の執務室のフロアロビーだ。 私の執務室はRIVIROの施設から離れ、ハートインレット付近の海の中に存在する。 バカなネロが海中水族館だのと騒いでいたが、海の中に存在するのだから致し方がないか。 「プリム」 私の連隊を率いる娘に声をかけると、にやつき顔で振り返る。 「はぁい? どしたの、セレス姐さん」 プリムの手にはシグルドの盗撮写真。 私は溜め息をついた。 「……私は少し出て来る」 「はぁい、行ってらっしゃーイ」 RIVIROの幹部の証であるロングコートを肩に羽織り、私は自分の執務室から出た。 RIVIROから離れているのだ、主君である楓様にご足労頂くのは臣下の名が廃る。 一面ガラスばりのエレベーターを使い、私は地上へと足を踏み出すと。 「おっと」 「…っ!」 キュイラス殿と鉢合わせた。 思わぬ急接近に私の体は固まり、思わず息を詰めてしまった。 「キュ、キュイラス殿…私に何か用、か?」 「うん。 これから時間あるかい?」 「あ…」 私は楓様の臣下、楓様の命を何より最優先しなければならないにも関わらず、私の気分が降下した。  
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