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長くストレートの黒髪が風に吹かれてゆらゆらと揺れる。髪とは対照的な白い肌にうっすらと微笑みを浮かべている。妖艶と呼ぶべきなのだろうか、しかし、青紫の目で今にも襲いかかりそうな女子達を見る瞳を見ると恭真の体温は下がっていくように感じた。
「闇の彼方、空の果て、大地へ落ちろ、焼き尽くせ!」
ビューン、
詠唱を唱えた女子が衣吹に向かって、バランスボール並の火の玉を飛ばす。
たった4文だけの詠唱でこれだけの大きさを飛ばすのは、並の人間にはできない。恐らく、死ぬ気で練習したか、血族に魔女がいるのだろう。
ドーーン!
立っていた衣吹に巨大な火の玉が直撃する。ゴウゴゴゴという炎の音が、さらに周囲の野次馬達のどよめきを大きくさせる。
恭真も、蛍も息をのんだ。さすがに直撃は無傷では済まないだろう。
二人が駆け寄ろうとした瞬間、燃えさかる火の中に人影が映った。
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