とある兵士のプロローグ

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子供の頃、おばあちゃんが暖炉の側で絵本を読んでくれるのが好きだった。 動物が喋るような世界に夢を馳せ、お姫様の物語に幼いながらも甘酸っぱいものを覚えたりした。 でも、そのなかでも取り分け僕の心を掴んだのは英雄伝だった。 お話のなかで勇者と呼ばれる人間は力と知恵、そして勇気をもって難題を解決していくのだ。 そして邪悪なドラゴンすら倒し、お姫様と結ばれる。 そんな今思えば陳腐な物語に子供の頃の僕は目を輝かせて聞き入り、勇者に憧れ、勇者になりたいと願うようになった。 しかし時が流れればいずれ悟る。 誰もが子供の頃に憧れたものに、自分はなれないのだと。 自分は特別ではないのだと。 ましてや伝説の勇者の血を継いだでもなく、ただ村の道場で剣を習っただけの農家の息子が勇者になんかなれるわけがない。 そしてそれを悟りながらも諦めきれなかった僕は、せめてお姫様を守れるような男になりたいと思い、単身村を出て流浪の旅をしているうちに辿り着いたグラムガーデンという国で兵士になりました。
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