栄光

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. 「すごい声援だな……」 雄二は、まったくの他人事のように呑気につぶやいた。 その声援が、すべて自分に向けられたものであるにもかかわらず。 平成十九年十二月十日、横浜アリーナ。 場内は、割れんばかりの水原コールに包まれていた。 デビュー以来、破竹の十九連続KO勝利。 あっという間に、ボクシング界の寵児にノシ上がった、水原雄二。 今日はいよいよ、雄二が世界バンタム級タイトル戦に挑むのだ。 下馬評では、雄二がチャンピオンを倒し、新チャンピオン誕生……とゆう予想が、圧倒的多数を占めていた。 雄二もまた、己れの勝利を信じて疑わなかった。 爽快な闘志。 十二回目の防衛戦に臨む、老獪なチャンピオンをのむ気迫。 雄二は、その自覚に満足感を覚えていた。 .
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