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「行ってらっしゃ~い」
アパートの玄関口で、紗季は小さく手を振った。
ヒマワリがパッと花開いたような笑顔……その華やいだ笑顔を見た雄二の胸で、先ほどまでの鬱壊が嘘のように消え失せた。
「おう!」
雄二は、野太く力のある声で、背後の紗季に答えた。
紗季の雄二への気遣いが、痛ましいほどに感じられた。
これまで、紗季のこの花のような笑顔に、幾度救われたことだろう。
先ほどまでの茫然自失とした雄二とは、まるで別人のような気迫が全身にみなぎっている。
その気迫は、神々しいオーラとなって、雄二の両肩から立ち昇っていた。
雄二は、気迫のみなぎった鬼神の如き面持ちで、悠然と振り向いた。
そして……
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