プロローグ

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「ふぅ……やっと着いたわ。」 貴女は故郷、日本の空港に降り立って言った。 飛行機に乗って数十時間。 3年ぶりに帰ってきた日本は、どこか懐かしい空気だ。 3年前、貴女は語学留学ということでフランスに渡った。 もっとも、語学留学というのは建て前で、実際は「自転車留学」とでも言うべきだ。 貴女は幼い頃、「自転車競技」というスポーツに興味を持った。 両親も兄弟も友人もロードバイクが好きで、毎日乗り回しているような環境で育った貴女がロードに興味を持つのは当たり前だった。 当時、小学6年生だった貴女はロードに乗るよりもメカニックに興味を持ち、本場のヨーロッパで勉強したいと強く願った。 これに両親は大賛成。 それから3年間、貴女はフランスに拠点を置き、本場のメカニックを学んだ。 そして高校生になる今年、日本に帰国することになったのだ。 「お帰りなさいませ、お嬢様。」 出口ゲートでは運転手の高橋が貴女のことを待っていた。 「お久し振りね、高橋さん。」 「お久し振りでございます。お元気そうで何よりです。」 荷物をお持ちいたします、と言って高橋は貴女の荷物を運んだ。
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