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ほどなくして車に着いた。
貴女は後部座席に乗り込み、すぐさま高橋に聞く。
「今日は確か…インターハイの初日よね?」
「はい。お坊っちゃまも出場なさいますよ。」
「じゃあ、今すぐ箱根に向かってちょうだいな。」
貴方がそう言うと、高橋はミラー越しに恐る恐る尋ねる。
「……旦那様と奥様へのご挨拶は…?」
「インハイが終わったら帰るから大丈夫よ。」
心配しないで、とにこやかに言うと、運転席から苦笑が漏れる。
「相変わらずでいらっしゃいますね。お嬢様は。」
「そうかしら?まぁ、何も言わずに帰って来たから、どんなリアクションするのか見たいのもあるんだけどね。」
今度こそ高橋の顔色が変わった。
「まさか、お坊っちゃまに秘密で…?」
「そうよ。お父様に言われていたでしょう?私を迎えに行くのはくれぐれも内密にって。」
確かに…と小声で呟く高橋を見て、貴女はいたずらっ子のように笑みを浮かべた。
「早く会いたいわ……俊輔。」
箱根までの道のりはまだ長い。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「お嬢様、箱根に到着致しました。」
「ありがとう。ところで、俊輔はどこかしら?」
「私もそこまでは把握しておりませんが、おそらく学校のテントにいらっしゃるのではないかと。」
「そう…確か…総北高校よね?」
「はい。寒崎様もいらっしゃるはずです。」
その一言で、貴女は目を輝かせた。
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