隻腕の最強

prologue

大男が天井を指差し、振り降ろせば女に雷が降り注ぐ。球体の水の玉に入り、雷を凌ぐ女。純水は電気を通さない。女が防御に回るとわかっていたかのように、大男はその大剣で水の玉を切り裂く。

しかし、もう女は水の中にいなかった。水を鏡のように使い、男の後ろに回っていた女。男の背を蹴飛ばし、自身はその勢いで跳ぶ。風で男を縛ると、弓を放つ体制になる。

すると、女の衣が弓と矢に変わり、照準を男に合わせて弓を引く。衣が弓と矢に変化した瞬間、会場の男性諸君から歓声があがったのは秘密だ。

男は風の拘束から逃れようともがくが、もう遅い。光の矢に貫かれて、その姿が霧散した。女の弓が衣に戻り、渡と共に一礼し、渡の挨拶は終わった。

会場内にアナウンスが流れ、各クラス担任の紹介に移ろうとするのだが、会場内は騒がしくて誰も聞いていない。指笛まで飛んでくる。マニラがマイクを通して注意を引こうとするが、誰も気付かない。

渡がマニラの傍まで近寄り、耳を塞ぐように言う。渡は少しマニラから離れると、息を大きく吸った。