before prologue

2/2
3241人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
ある家に天使がいた。それも大天使と言われるほど高位の天使だ。 この天使は女だった。本来天使には性別というものがない。だが、この天使、いや、名の通っている天使達は性別が付けられた者が多い。堕天使ルシファーは男で、現在神の補佐を務めているラファエルは男の娘である。他にもいるが、ここで紹介する必要は無いだろう。 性別のある大天使、ミカエルは一人の少年に恋をした。今までも自分を褒めてくれた者はいた。今までも自分を美しいと言ってくれる者もいた。しかし、心が揺れたのは少年の、それも人間の少年の言葉だった。 今日はそんな彼の結婚式。彼女の愛する彼の結婚式。 町はずれの教会で、神を象る十字架の前に立つ緑の髪を持つ片腕の男。白い服を身に纏い愛する人を待つ。 彼の前に桃色の髪を持つ女性が立つ。参列者の中からすすり泣くような声が漏れる。感極まって泣いている者もいるようだ。 しかし、何人かは首を傾げている。その理由は新郎が神父の斜め前に立っているのではなく、真正面に立っているからだ。金髪の天使と桃色の女子が隻腕の男を挟んで立つ。 そして大天使は参列者たちに向けてこう言った。 「いつから私が花嫁ではないと錯覚していた?」
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!