第一章 『神成』を継ぐ者

9/13
前へ
/17ページ
次へ
座席から窓の外を眺めていると、機内にサブマシンガンを持った連中が乗り込んできた。 その内の一人が拡声器を手にする。 『これから各政府や個人に身代金の要求をするッ! 身代金の支払いが確認され次第、順次我々の用意した船に乗せて近くの島に解放するッ! 下手な抵抗をしなければ、我々は一切君達に危害を加えないッ! 我々は[砂漠のダイヤ]ッ! 繰り返す……』 その男は拡声器を使って何度かそう繰り返した。 その言葉を聞いて、機内の雰囲気が幾らか緩んだ。 上手いやり方だ。イカれた組織が見せしめの為に全員殺すと言えば、乗客はそれこそ死に物狂いで抵抗するだろう。身代金を払えば助かると分かれば、誰も抵抗する気が無くなる。身代金を払えば人質に危害を加えないと有名な[砂漠のダイヤ]の名前を出せば尚更だ。 おまけに……ファーストクラスに乗る様な連中の場合、政府じゃなくて個人や会社に身代金を請求。政府相手なら「犯罪者には屈しないぞ」って名目の上、身代金が支払われない場合もあるけど、個人や会社なら人質の命を最優先に身代金は支払われるだろう。順次解放ってのは、個人や会社が身代金を払った連中を先に解放するって事だろうな。 身代金を払えば人質が助かるのに、特殊部隊なんかを投入して人質に死傷者が出ようものなら世論の批難殺到……国際問題になりかねない。 最終的に身代金をがっぽり儲けて、[砂漠のダイヤ]の名前はまだ一段と上がる訳か……。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

720人が本棚に入れています
本棚に追加