プロローグ

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俺は鍋の汁をオタマで僅かにすくい、小皿に移してから口にして味を確かめた。 「……こんなもんか」 何度も確かめながら味を調整したから問題無い筈だけど、いまいち自信は無い。 もともと俺は料理するタイプじゃないけど……生憎、俺以上に料理をしない奴等が揃ってしまった。 昆布や鶏ガラで出汁を取った汁に白菜、水菜、鶏肉、肉団子、豆腐なんかを入れた……ちゃんこ鍋か? コンロの火を消し、鍋つかみを両手に装着して鍋をリビングに持っていく。 リビングには八人程が座れる大型のこたつがあり、そこには六人の女が座っていた。 「おぉ、それがお前さん自慢の鍋かい?」 「……自慢する程のもんじゃないけどな」 こたつの中心に置かれたカセットコンロの上に鍋を置きながら、声を掛けてきた女にそう返す。 腰まである茶髪は軽くウェーブが掛かっていて、歳は俺よりひとつ上の17……もうすぐ18だ。髪型以上に雰囲気が大人っぽく、スーツでも着て街中を歩いていればキャリアOL にでも見えるだろう。 ……いや、やっぱりOL には見えないか。何故なら、その眼光の鋭さは素人でもこの女が堅気じゃないと気付かせてしまう。 それもその筈……この女は高松燎子(たかまつりょうこ)。関東一円を仕切る高松組の組長なんだ。組長の女房でも愛人でもなく、この女が組のトップなんだ。
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