720人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「兄さん、何か手伝う?」
「おせぇよッ! つか、分かってて聞いたなッ!?」
「……フッ」
で最後に、殊勝な様で生意気なこの女が俺の妹の小早川巫女(こばやかわみこ)だ。
この妹は妹で、親父方の婆ちゃんと間違われる容姿をしている。ガキの頃、クソ親父が「婆ちゃんは歳を取れない呪いをかけられているんだ」と冗談で言っていたが、最近それはマジなんじゃないかと思い初めている。
俺以外全員女のクリスマス会だが、誰一人料理を作ったり、食事の準備を手伝おうとはしなかった。
「つーか、こんだけ女が雁首揃えているのに、誰も料理出来ないってどうなってんだ」
一人立っている俺はため息混じりに愚痴を溢す。
「料理は金を払えば出るものだ。わざわざ作りはしない」
「すまない。料理は訓練項目に入っていなかったんだ」
「そもそも、料理は女性が作るというのが全時代的ですわ」
「そぉねぇ、あたしも料理は苦手だなぁ」
「……狙撃なら得意だ」
「兄さん、実はウチ……台所に立つと立ち眩みがする呪いにかかっているんです」
六人の言い訳にもなっていない返事に、俺はさっきよりも深いため息をついた。
「……泣けてくるぜ」
※※※
クリスマスイブ……こいつらと知り合ってまだ8ヶ月だというのに、昔からの知り合いの様に馴染んでいる。
今この状況を見ている奴等がいたとして、「俺、こいつらと命のやり取りをしたんだ」と言っても、誰が信じるだろうか?
まぁ、話は約8ヶ月前……海外から俺達兄弟が日本に帰ってきた頃に遡る。
最初のコメントを投稿しよう!