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「……そんなに似てるか?」
男が憮然とした顔で頬を指先で掻いた。
「似ている」
「似てます」
女と少女に同時に答えられ、益々男の顔が憮然とする。でもそれは嫌悪感というより、気恥ずかしいといった風に見えた。
そんな時、偶然その三人組と同じ方向を歩いていた白人男性が不思議そうに首を傾げた。
「兄弟? 姉妹?」
その単語は、この三人組から最も遠い言葉に思えた。だが、この三人の会話内容……何より、三人の互いを思う言葉使いや雰囲気がこの三人組を『家族』と言っていた。
※※※
俺達は手続きを終えて飛行機に乗り込んだ。座席はエコノミーでも良かったけど、俺の体格を考慮して爺ちゃんがビジネスを用意してくれた。母方の祖父の爺ちゃんは、父方の祖父のクソジジイとは人間の出来が違うな。
自分達の手荷物を上に入れてから座席に着くと、隣の魅子が眠そうな目を俺に向けている事に気付いた。
「どうした?」
「兄さん。『嫌な人達』が乗ってます」
「……マジかぁ」
魅子の言葉に、俺はため息をついて前髪を掻いた。
これで何回目だっつーの!
「何処だ?」
「ウチの席から前に十三席目と、ファーストクラスに一番近い座席の辺り」
「二人組か?」
俺と魅子の会話にアリアが入ってきた。その目は既に仕事の時の鋭さになっている。
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