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落ちていく。落ちていく。
そんな意識の中で、レンは視ていた。
幾つもの花が咲き誇る庭園。その中心に佇む、たった独りきりの少女のことを。
不意に、彼女の頬を一筋の涙が伝った。
「もう――、止める事は叶わないの…?」
消え入りそうな、小さな呟き。
けれど、そこに込められた少女の嘆願に、レンは胸に痛みを感じた。
少女は彼に気付くことなく、空をふり仰ぐ。
「このままでは、何もかもが無駄になってしまう…。あの人の遺志も――私の、想いも」
そうして、手を伸ばすと、彼女は何かを掴みとる仕草をした。
(あれ、は…)
少女が開いた掌を見て、レンは目を見張る。
彼女の白い手の上には、とても美しい、透き通った石が乗せられていた。
(綺麗だ…)
思わず、触れようとして手を伸ばしかける。
だが、触れる直前で、はっと我に帰った。
(いけない、いけない!ただの夢なんだ。触れる筈ないだろ!)
そうして、強く頭を振って、彼が手を引くのと――少女の持つ石が砕けるのは、同時だった。
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