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(え…!?)
弾け飛ばされた石の欠片が少女の頬に作った傷を見て、レンは愕然とする。
(何が、起こったんだ…?)
一方、状況を理解できない彼をよそに、少女は驚くほど静かな瞳をしていた。
そっと傷を拭うと、手を離した時には、いつの間にか、痕が消えている。
「…やはり、今の私では、制御できないのね」
(…?)
レンはさらに困惑した表情を浮かべるが、次の言葉を耳にして、瞬く間に顔色を変えた。
「今の私は、“秘術師”とは呼べない…」
「…!?」
“秘術師”。
ここしばらく、ずっと疎遠となっていた言葉に、彼は息を呑む。
最後に聞いたのは、父が異端として処されて以来か――?
ふと、彼は次第に霞ゆく視界に気が付いた。
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