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(まだ、ダメだ…!あの子に、彼女に聞かなきゃいけないことが…っ!)
必死に意識を保って、彼女に目を見据える。
その時だ。
「…レン?」
少女の双眸が、はっきりとレンの目を捉えた――。
不安そうに名を呼ばれ、恐る恐る手を差し出してくる。
(気付いて、くれた…!)
嬉しくて、彼も手を伸ばして、彼女の手のひらに重ねる。
途端に、少女は大きく顔を歪めた。
「…レン!!」
転がるように駆け寄ってきて、レンに抱きつこうとする。自然と、彼はそれを受け入れ、両手で彼女を包み込もうとした。
「ティ…」
しかし、その手は虚空を切る。
気付けば、辺りはいつもの闇に包まれていた。
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