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「ん…」
冷たい土の感触に、レンは身動ぎをした。
目を開けると、風に揺れる青々とした草木がぼんやりと見えてくる。
(ここは…)
彼は瞬きをして、ゆっくりと身を起こした。
途端に強い目眩に襲われ、ようやくこの状況を思い出す。
(そうだ…。僕は、今、力を使って…)
空に手をかざすと、太陽が透けて見える。
普通ならば、真っ青になって慌てるところを、レンは満足そうに笑みを浮かべた。
(よし…!大丈夫、術はとけてない)
そもそも、術がとけていれば、彼がこんなところにいる筈がないのだが――。
レンはぐるりと辺りを見回すと、それから、困ったように首をかしげた。
(あれ…?おかしいな。いつもはこんなに場所がずれたりしないのに…)
彼が先程までいたのは、村の外れにある学舎だ。いくら村から離れているといっても、ここまで人気がないところではない。
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