第一章 幽霊の噂と秘密

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(――んだけど…) 幼い頃、父には力の扱いが雑だと言われたことがあった。だが、ここまでとは――。 己の無能さに頭を抱えながら、レンはため息をつく。 (しょうがない。少し歩くか) そうして、もと来たであろう道へ――つまり、村のある方向へと歩き出そうとして――すぐに、足を止めることとなった。 (…なんだ?) 聞こえたのは、唄。優しい、けれど、すごく哀しげな――。 それは、女性の声。そして、どこか聞き覚えのある、少女のものだった。 その子は誰だったのか。 それを思い出す前に、背後の物音に思考をかき消されてしまう。 驚いて振り向くと、レンを凝視する、見たことのない青年と目が合った。 (いや…。あの人が見ているのは、僕じゃない) レンは首を振って、そう思い直す。 何故なら、今の彼は、人の目に映らない、人ならぬ存在なのだから。 生き霊、と人々は呼ぶのだろうか。そもそも、生きているのか死んでいるのかも定かでないだろうから、むしろ、幽霊と思われるのかもしれない。
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