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まあ、たしかに今のレンは、それに近い状態ではあった。――正直なところは、実は本人もよく分かっていないけれど。
だから、レンは当然、そちらに視線を向ける。
だが、先程と何ら変わりもない景色に、彼は当惑の表情を浮かべた。
「…お前」
不意に、青年が口を開く。
自分に話しかけられたわけでもないのに、その声音が恐ろしく冷たいから、思わずレンは肩をすくめてしまう。
恐る恐る振り返ると、やはり、青年はレンのことを睨み付けていた。殺気に満ちた瞳にひたと見据えられ、彼は息を詰まらせる。
「ひ…っ」
「おまえか?」
その場には誰もいないのに、青年は詰問するように言った。
レンが言葉もなく彼を見つめていると、再度問いかけられる。
「おい。聞いてんのか?」
「…えっ。ぼ、僕?」
驚いて訊ねただけなのに、彼は心底苛ついた様子で睨み付けてくる。
「ああ?他に誰がいるんだよ。だいたい、こっちが質問してるのに、なんで…」
「スミマセンっ!!失礼します!!」
唐突にレンはそう告げると、180度向きを変えて、思いきり疾走した。
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