プロローグ

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散らばる薔薇。花畑。 空気は澄み、鳥はさえずり、獣は穏やかにたわむれる。 草木はいきいきとした鮮烈さを辺りに飛び散らし、木もれびからこぼれる陽光は温かく世界を照らす。 吹き抜ける風は柔らかく、緑の間をすり抜けて大地と大空を優しく撫でる。 この景色はいつか見た風景。 人は苦しいことも悲しいこともなく、病気もせず、老いることもない。 人間と動物たちは意志を通わせ、人は彼らと大地を世話し、保護し、争うことなく平和に生きた…。 満ちる安寧、安らかな世界。 一人の天使と一組の男女が反逆するまでは――…。 『わたしが犠牲になりましょう』 と、御子イエスが言った。 ああ、神よ、イエス・キリストよ、罪深い人間(わたしたち)を許したまえ。 それでも人間は求め続ける。 失われし永遠という名の楽園を―――…。 .
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