271人が本棚に入れています
本棚に追加
まだ寒さが続く中、悠里と順を迎えに車を走らせた
二人で暮らしていた団地に足を踏み入れれば、何も無い部屋には、鳥海姉弟に小野坂さん親子の姿があった
サヤちゃんが順に寄り添い、泣き顔を見せないように、必死に耐えて笑顔を見せていた
「吉野、幸せにしないと許さないからな
まぁ、三年かな
サヤの為に呼び戻すから、覚悟しておけ」
小野坂さんが肩を叩いてから、右手を差し出した
それをしっかり受け止める
「必ず幸せにします
小野坂さんに負けないくらいに優秀になってみせますから」
笑った顔はいつもの小野坂さんで、あの日に見せた男の顔なんて無かった
「先輩、私はまだ納得してる訳じゃないですからね
とりあえず、式は楽しみにしてますから」
鳥海瑞希が意地悪そうに声を掛けた
来週の3月の最後の土曜日に小さな教会で、俺達の儀式を行う予定になっていた
急な予定で、空いている教会を探すのに苦労した
夕方の遅い時間になってしまったけれど
悠里は結婚式もいらないと言ったけれど、俺がどうしても挙げたかった
俺達が家族になる最初の儀式…
そのために引っ越しの準備を母さんに任せてきたんだから
「悠里、順、行こう
俺達の家へ」
一旦サヨナラするけれど、繋がりが切れた訳じゃない
今まで、悠里と順を支えてくれた人達に感謝を込めて
順がサヤちゃんと別れ際、小指を絡ませて
「僕、サヤちゃんの一番星になるように頑張るから
お星様の下に僕はいるよ、またね、サヤちゃん」
小さな俺が順に、小さな悠里がサヤちゃんに重なっていく
こうして続いていくんだ
一番星に願いを込めて…
最初のコメントを投稿しよう!