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雲は晴れなかった。いつもは煙草の煙と一緒に吐きだしてしまうこのもやもやも、今は晴れなかった。
仕事場の天地出版社(あまちしゅっぱんしゃ)ビル屋上で、私は先ほどまでのことを頭の中で何度も何度も反芻していた。それは永久とも思える時間。
高岸 美奈子(たかぎし みなこ)。私の姪にあたる少女。彼女が亡くなったと兄から聞かされたのは、二時間前、午前八時のことだ。
実を言えば、高岸 美奈子と私はそんなに面識があるわけではない。彼女が四、五歳のころまでは遊んでやったが、十年ほど経った今では疎遠になっていた。
それでも、このもやもやが晴れないのはある事柄が私の心を支配しているからで、その事柄を思い浮かべる度に彼女への想いがより一層強くなる。
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