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見れば、彼の背丈をゆうに越すであろう黒い塊が猛然と迫っていた。それは、茂みの中を、ぐんぐんと駆けていた。近づくにつれ、その様子が見えてきた。犬のように、獣耳を生やし、この森と同じくらいの暗闇をした体毛がごわごわとそれを包んでいる。四つん這いに駆ける、それの荒々しい吐息、口内から垂れる涎、爛々と紅く灯る眼。それを認識し、自然と、彼の足がおぼつかなくなる。
それを隙と見てか、獣はけたたましく吠え、飛びかかってきた。
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