優菜、21才

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「ひっく!うるせぇんだよ。安希、ボトル出せよ。」 この店は、客より女の子の方が威張っている。 特に一番態度がでかいのは、酔っぱらったママだった。 でも何故かこの滅茶苦茶な店が毎日満員御礼というのは、この世の七不思議に数えてもいいんじゃないのかな。 「安希ちゃん可愛いよね。俺と付き合わない?」 「また…、スナックで女の子口説いても虚しいだけだよ。」 安希は、浅香唯によく似ていたけど、声に物凄く特徴があって、絶対に歌は歌わない。 優菜は、カラオケと酒と、祭りで声を潰していたので、このふたりは時たまオカマに間違われる。 このメロンの産地にあるスナックの客層は、もちろんメロン農家。 それと農協職員で八割方をしめている。 なので飲み方が半端ない。 ウイスキーをストレートで呑む最強のメロン農家の長男がいたりとか。 何でも日中のメロンハウスの中の温度は60℃まで上がるらしいから。 だから前の日どんなに呑んでも、ハウスの中で全部汗になってしまうらしい。 高いお金払って呑んで、次の日には汗で流れてしまうって勿体なくないのかな? ま、どうせメロンで荒稼ぎしてるから、場末のスナックの呑み代なんて、何ともないんだよね。 ただね…。 やっぱりスナックで女の子口説くのはかなり難しい事かもね。 「優菜、俺の嫁さんになってくれよ。」 「何で?」 「優菜ならメロンハウスでも使えるから。」 こいつ ぶん殴ったろか。 「ふん!あたし彼氏いるし。」 普通のスナックでは禁句の彼氏いるも、この店は全く関係ない。 だってそれでも口説くし、嫁に来てくれとか言われるもん。
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