華麗なる反撃

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言葉の重みに気付いてオレまで顔を赤く染める。 ジャージの隙間から見える古川の耳も真っ赤だった。 「…っ…えっと…」 こんな時、うまく格好良いことを言えない自分が情けない。 嬉しさと恥ずかしさでいっぱいになり何も言えなくなった。 さっきまで冷たく感じた雨粒が無性に気持ち良い。 それが自分の体温が上がったせいだと気付くのに時間はかからなかった。 結局、無言のまま家に着いてしまった。 両親は共働きのため誰も居ない。 風邪をひかせないために古川を風呂に入れさせた。 「ふぅ…」 自室に戻ったオレは二人ぶんのカバンを机に置いた。 濡れて張りついた制服を脱ぐと、下着とズボンを穿き直す。 バスタオルで荒々しく髪の毛を拭きベットに腰掛けた。 すると階段を登ってくる音が聞こえた。 カチャ―…。 「…あっ…あの………」 「あっ」 ドアが開き古川が部屋に入ってきた。 オレは古川の方を向いて目を背ける。 や、やばい……。 血流が一気に激しく流れだした。 古川とオレじゃ全然服のサイズが違うことぐらいわかっていたはずなのに。 ブカブカで手は完全に隠れ、足は太ももまで隠れているシャツ。 不自然に大きく床を引きずるズボン。 まるでお人形のような古川に顔を赤らめ動悸が走った。 「……あっ…と…古川」 「…はっ…はい……」 オレは恐る恐る古川を見上げる。 古川も恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていた。 それを見て余計に言葉が出ない。 それを見ていた古川が口を開いた。 「…あっ…あの………」 「え?」 「…こ、これ…」 古川はボイスレコーダーを取り出した。 「…きっ…今日、暴行されてる時…ずっと録音しておきました…」 「…え…っ…!?」 オレは目を見開く。 すると古川は居心地悪そうに俯く。 「…聞いても、いいか?」 オレはそっと古川に近づいた。 彼はピクンと反応して小さく頷く。 オレはそれを受け取った。 オレは静かに再生ボタンを押した。 《「…ちょっ…何すっ…」 「うっせぇなー。お前、最近調子乗りすぎなんだよっ…」 「…離っ…!!…むぐっ…ふ」 「久留米を味方に付けて何考えてんだよっ」 「…むぐっ…ふぅ…っ…」 「キモイんだよっ!バーカ!」》 カチャ―…。 聞いていられなくて、ボイスレコーダーを切る。 古川が震えていたからだ。 今は確認する程度でいい。 胸が詰まりそうなくらい生々しい記録に言葉を失う。 オレはそっと古川を抱き寄せた。
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