華麗なる反撃

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これ以上ないくらい真っ赤になった古川は逃げるように立ち上がる。 だが立ち上がると転んでずれていたズボンがストンと落ちてしまった。 「っ!?…やだぁっ…!!」 古川の生足が顔を覗かせる。 オレはテンパる古川の腕をつかみ自分の胸に押しつけた。 「嬉しいっ…」 オレはもう逃げられないように力を込める。 自分のパンツを履いただけで勃起するなんて嬉しいに決まっている! オレはこみあがった興奮に体を揺らした。 「ずっと硬くしてたの?」 オレは腰に手を回したままそっと囁く。 「…っ……はい…」 古川は逃げられないことを悟ったのか、胸の中で縮こまった。 そんな様子すら愛しくておでこを重ね合わせる。 「古川、可愛いー…」 「なっ…そんなっ…!」 古川は困ったように眉を下げるとオレのズボンを握る。 どうやらオレの肌には触れてくれないらしい。 「…い…意地悪っ…です…!」 「そんなことないって」 「だ…って、僕ばっかりドキドキしてて…うぅ」 落ち込む古川のおでこにそっとキスをする。 「…っ…!!!」 「古川だけじゃないよ?」 キスをされた古川は思いっきりオレの方を見上げる。 「あっ……」 どうやら気づいたらしい。 「オレもすっごいドキドキしてる…」 「く、久留米さ…」 古川はオレの真っ赤な顔を見て少し安心したように微笑む。 余裕なんてあるわけない。 むしろ古川よりドキドキしてて、心臓が止まりそうなんだ。 膨らんだ風船が弾けてしまわぬように、静かに空気を抜く。 そんな感じであった。 これ以上ドキドキして興奮してしまったら古川を襲ってしまうかもしれない。 古川を傷つけてしまうかもしれない。 猛々しい本能を無理矢理笑っているんだ。 じゃなきゃ、我慢が出来そうにない。 「…な、古川…」 「えっ…?」 「キス、して…いい?」 ゆっくりと古川の頬に触れ、その存在を確かめる。 古川の唇はオレを誘っているようにぷるんとしていた。 アメリカと日本じゃキスのニュアンスがだいぶ違う。 慣れてるとはいえ“恋人とのキス”は特別だ。 強引に奪うなんてことが出来なくてオレは不安げに古川を見ていた。 「…ぁ…っ…う…」 古川もどうしていいかわからないみたいだ。 まるで百面相のようにキョロキョロしている。 だからオレは「嫌?」と一言呟く。 すると古川は激しく首を振ってそれを否定した。 オレは内心ホッと安心しつつそれを悟られないように笑う。
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