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帝国の中でも独自の自治と発言の認められしゼッケル公爵家。
現在、この屋敷は二つの派閥に別れていると言って過言は無かろう。
二人の跡取り候補、その二人をそれぞれの思惑を持って推す家人達、帝国内の貴族達をも多大な発言力を持つ公爵の跡取りに感心があると言う始末。
屋敷の空気は、日夜緊張に満ちたやり取りが繰り返されていたのである。
その当事者の1人、15歳になったばかりのゼッケル公爵家、三男イオン・カーティス・メルベル・フォン・パーセル・ゼッケル(以下イオン・フォン・ゼッケルもしくはイオン)、彼の教育係とこの家の執事を勤めるゲルバルト・シュナイゼンは自室より窓下を見下ろしながら、ふとため息を漏らす。
彼の様子を怪訝に感じながら、外見は少女のようだかどこか年齢に似合わぬ落ち着きを持つ女性、彼女はルーンフォーク所謂アンドロイドといえばわかり安いだろうか、名をアンナと言う。
彼女が語りかける。
「ゲルバルト様、計画は順調に進んでおります、お探しの冒険者も最適な者達が見つかったと、宿から報告も入りましたのに、何か心配でも?」
彼は窓下から目を離す事無く「ここに至ってはもうどうにもなりはしない…」と呟く様に漏らすが…、彼女に向き直し
「何も問題は無い、計画どうり進めて貰おう」とはっきりと答えた。
その言葉に、アンナも「畏まりました。」と彼の自室を後にする。
一人残される形となったゲルバルトは、今はもう誰も居ない、先ほど迄一人の青年の居た、今は亡き公妃メアリージェーンの愛した庭園を眺め…「メアリー様、貴女の残された思いは必ず…
彼に責がある訳で無いわかってはいるが…
全ては、彼の方が為に…」
と拳を強く握りしめ己がこれから興す事柄について誰に語るでもない懺悔の言を漏らす…。
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