序章

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夕闇に染まる路地裏に一人佇む 息を弾ませた制服を纏う少女。 その彼女の足元には一匹の猫と 複数の若者達の身体があった。 若者達の口端からは血が出てて 身体の至る所に青痣が目立つ。 そして一匹の猫は尻尾をもがれ 足の付根を切られた遺体状態。 「……神経、狂ってる」 彼等は猫を唯の遊び道具として 弄んで自分勝手に惨殺したと。 そう飄々とした態度で話す男に 堪忍袋の緒が切れて殴り付け。 そこから雪崩のように喧嘩して 彼等の身体を地面に転がした。 「人間として有り得ない」 無惨な姿で横たわる猫の遺体に 合掌して埋葬する為に抱える。 小さな猫の身体から伝わるのは 毛が血液で濡れて冷えた温度。 「……酷い事するものね」 腕の力を強くして抱き締めると 彼等の内の一人が立ち上がる。 「何、まだ喧嘩したい訳?」 優しく地面に猫の遺体を置いて 目の前の男に視線を合わせる。
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