序章

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顔を上げてみれば傍に居たのは 先程、腕をもいで現れた彼で。 強引に抱き締めようとする腕を 振り払おうと手を掴んだ瞬間。 「獅子舞が何で此処に?」 嘲笑うように話す吉高の言葉に 彼の表情は徐々に歪んでいく。 歪んだそんな表情を見た凪夜は 掴んでいた右手の力を緩める。 「……凪夜、待ってろ」 右手の力が緩んだ事に気付いた 彼は目を細め優しく微笑んで。 凪夜は彼の服を握り締めながら 目の前の吉高へと目を向けた。 吉高の表情は険しくなる一方で 握り締めた拳が白くなってく。 「獅子舞、とか昔の人間が決めた変な名前じゃなくて俺には―、」 そう彼が名前を言い掛けた瞬間 吉高が突然、間合いを詰めて。 詰まった彼は凪夜を庇うように 身体を半身にして構えた筈が。 吉高は彼の脇腹に一気に詰めて 拳がめり込むよう程に殴った。 「ぐぁッ…!かぐ、夜……」 地面に勢いよく倒れていく彼に 近付こうと手を伸ばした瞬間。
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