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さえこは少し大人びた話し方をして、
私に危険や注意しなくてならないことを、
教えるのを役目と思っているようでした。
そして、ある時から私に、
紙でヒトガタを作れと言うようになりました。
困ったのはその後です。
「ヒトガタをね、人だと思って見てごらん。いい?この子はミミだからね。暫く仲良くしてあげてから、ミミの頸に紐を巻いて吊るして」
さえこはこう命じたのです。
他にも、手足を切れと言ったり、
頸を折れと言ったり…
ただし必ず、
「仲良くしてから」なのでした。
「どうして?仲良しなのに、どうしてミミを吊るすの?」
見ればヒトガタのミミは悲しそうにも見えます。
さえこは言い聞かせるように言葉を区切りながら言いました。
「いいの。ミミはね、悲しいけどちゃんと解っているの。私たちと仲良しでも、暫くしたら私たちに殺されることが。ミミは知ってるんだけど、それでも一緒にいる間は友達だったのよ。解っていて、逃げずに死んでいくの」
さえこが何を教えたかったのか、
わかりませんでした。
「可哀想と思う?だけど仕方ないからミミは悲しくても我慢するのよ。だから吊るすのはちゃんとあなたがやらなきゃダメなの。見届けないとね。可哀想なら最期まで見なきゃ卑怯よ」
さえこは怒ったように言い続けました。
ヒトガタを殺める儀式は、
私がヒトガタの最期を
静かに尊敬して受け止めるようになるまで続けられました。
他にも、
「手足を切っておいて、怖いから途中でやめるなんて最低よ。人を何だと思っているの?殺してしまえるくらいの覚悟がないなら、傷つけたりする資格ないのよ」
こうも言いました。
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