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暗闇の中を一人、走り続ける制服姿の少女がいる。
その身に着衣されている紺色のブレザーには学校の紋章が刺繍されていた。
暗闇のせいか見た目では年ははっきりと判別することはできない。
少女は後ろで一つに縛り纏められたおさげ髪を振り乱し、はぁはぁ……と荒い息吹を吐きながら、その細長い双脚を必死に前後に動かし、決して綺麗とは言い難い細い畦道を走り続けていた。
少女の表情には苦悶の表情が伺える。
その瞳はどこか虚ろでうっすらと涙の膜がはられていた。
絹のような白い肌を伝い大粒の汗が滴り落ちる。
少女は走りながらも首を回し何度となく後ろを窺い見ていた。
その瞳は見開かれている。浮かび上がるは必死の表情。同時に何かを恐れているような雰囲気も醸し出していた。
――あっ!
そう声を発すると同時に少女はバランスを崩しその場に跪く。
荒くなった息を整えながら再度後ろを伺う様に首を回す。
その瞳の先に見えるのは徒党を組み少女に向かって一直線に迫りくる人々の姿。
各々が片方の手に懐中電灯やはたまた松明のようなものを掲げ……
さらにもう一方の手には鎌や包丁、サバイバルナイフのような物や手斧等を握りしめている者もいる。
その様子から当然、彼らが尋常な様子でない事は見て取れた。
その両眼を血走らせ口角を目一杯にまで吊り上げ、口内に収まりきらず滴り落ちてくる涎を拭こうともせず、ただ少女目掛け歩み続ける。
その姿はまさに狂気としか言いようがない。
少女は数度深呼吸をし息を整えると、再び立ち上がり脇目もふらず走り出す。
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