序章 日常

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「ほ~ら、隆太もう朝ごはんも出来てるから、さっさと支度して食べちゃいなさい。全く夏休み気分が抜け切れてないんだから……」  声のした方に、隆太の視線が移動した。  視界の先には台所で作業をするエプロン姿の母、北野 亜紀【きたの あき】の背中が映る。  その背中を見つめながら隆太が口を大きく広げ欠伸をし、 「あぁ、まだ大丈夫だよ母さん。それに始業式ぐらい別に多少遅れたって……」 と言いかける、が、その言葉は亜紀の声に遮られる。 「何馬鹿なこといってるの! もう本当早く支度しないと怒るわよ!」  口調は既に怒ってるだろ……と隆太は思ったりもしたが「へいへい」と頭を掻きながら気の無い返事を返した。 「もう! どうせ昨日も夜遅くまで変なビデオでも見てたんでしょう」  いまだ眠そうにしている隆太を横目に、美智子が口をへの字にして言った。
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