魔法の鏡

2/3
前へ
/3ページ
次へ
「一番美しいのは、森に住む白雪姫にございます。」 秋、紅葉はまだ緑色。 落ち葉の全くない9月半ば。 部活に入部している人たちは、それぞれの活動に励み、 何の部にも加入してない人たちは、 眠そうに家に帰っていく。 ここは、校舎2階の突き当りの部屋。 多目室。 演劇部の使用している教室だ。 今は、来月全校の前で発表する『白雪姫』の練習中だ。 「そこで御妃様の言葉が、驚いた表情をしてセリフね。」 私、草田 言葉は御妃様役。 今仕切っていた人は、部長の中谷 希。 同級生の中学二年生。 ちなみに、裏方専門だ。 三年生はどうしたか? 先輩方は8月に引退しました。 「そう。そしたら場面変わって、森の方。 白雪姫と、小人準備いいね、はい、セリフ。」 希は誰にも引け目を取らず、テンポよく行く。 そんなところにあこがれる。 「小人さん、何か手伝うことはないかしら。」 白雪姫を演じるのは、井上 マナ。 この演劇部…、 いや、全校で一番かわいいといわれる、 またも同級生。 でも、本当は性格が悪いとか。 いや、ほとんどの人は真実だと知っている。 知らないのは、一部の女子と、男子たち。 小人は、一年や二年の皆様。 ―――コンコン。 「あら、誰か来たみたい。私が出るわ。」 『白雪姫』の名場面の一つ、 魔女が白雪姫に毒りんごを渡す場面。 私は醜い魔女。 彼女は美人姫。 「こんにちは、お嬢さん。 今リンゴを売っているのだけれど、お一ついかが?」 ニセモノのリンゴを差し出す。 「まぁ、美味しそうなリンゴ。 でも、お金がないわ、残念だけどごめんなさい、お婆さん。」 「いいよ、今回はただで。 美味しかったらまた買っておくれ。」 リンゴを手渡す。 「ありがとう、お婆さん。」 そこでチャイムが鳴った。 部活終了の合図である。 「じゃあ、今日はここまでね。 明日、今の続きからやるから、そのつもりで。 じゃ、解散。」 ありがとうございましたー。 と、皆で挨拶をし今日の練習が終わった。 私は帰りの支度を速やかにすませ、 皆にバイバイ、といって、 下駄箱に向かった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加