マエムキニ

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「おつかれ!」 通路に出てあいさつをすると、キッチンとホールから聞き慣れた声が返ってきた。 私はキッチンの小さな洗面台で手を洗う。ブラシを使って爪とひじのあたりまであらたてタウパーで拭いたあと、仕上げにアルコールを吹き付ける。 それからタイムカードを機械にさした。 「神代さん、おつかれっす」 がちり、って書き込む音と同時に後ろから声がした。 「あっ、あっくんおつかれー」 私は振り返ってあいさつをする。あっくんは高2で、バイト歴一年のコック。厨房のことは一通りまかせられるようになったって感じかな。 「こっち今日からキッチンに入った荒井崇君です」 あっくんが右手で示す先に男の子がたっている。おとなしそうな雰囲気だ。 「うん、連絡ノートでみたよ。荒井崇くんだよね?私は神代魅」 私を見て、崇くんがちょっと驚いた顔をした。 えっ!中学生?ーそう言ったように見えたのは、きっと気のせいだよね。 「崇くん、今日からよろしくね」 私は人を下の名前で呼ぶことにしてるんだ。その方が親しみがわくからね。
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