プロローグ

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あたしは言われたとおりそっとさわった。お花は温かくてやわらかかった。 とうさんはいつもやさしい。 お花にも私にもやさしい。 お母さんにもやさしかった。 あたしが振り向こうとすると、父さんがそれに合わせて動いてくれる。 たくさんの色の花。 公園には、お花見でたくさんの人がきていた。 おじさん、おばさん、おにいさん、おねぇさん、あたしと同じくらいの子達。 高いから全部みえた。 高いところから見るのがすきだ。きもちいいし、大きくなったみたいだし、なんだかわくわくする。 「とうさん、ぐるんぐるんやって」 私はいつものようにおねだりしてみた。 「よーし。それっ」 とうさんがぐるぐる回る。 だから、あたしもぐるぐる回る。 耳のところで風がひゅーひゅーいう。
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