プロローグ

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「とうさん、ぐあい悪いの?」 私は心配になった。 「平気だよ。ご飯食べてすぐに動いたからだろう」 「…みいるのお弁当おいしくなかったから、ぐあいがわるいの?」 不安になった私にも、父さんが笑う。 「お弁当はおいしかったよ。父さん普段絵ばかり描いてるから運動不足なんだー」 私は、私と父さんの間に置いてある、からっぽのお弁当箱をみた。 朝、私が作ったお弁当。 父さんは美味しいって言ってくれたけど、自分で食べてみたらちっとも美味しくなかった。いいって言ったのに、父さんが全部食べちゃった。 「母さんのお弁当はおいしかったのに…」 私はしゅんとなる。 父さんは遠い目になる。 「そうだな……母さんの弁当はおいしかったな」 母さんはお空に行ったんだと父さんは聞かせてくれた。 高い空。 それで私はなんとなくもう世界中さがしても母さんには会えないんだろうなということがわかった。
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