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その瞬間、全ての感覚を"奪われた"。
少女は笑みを消し、いつもは穏やかな光を持つ紅い瞳は怒りの炎で燃えていた。その瞳と目があった瞬間、クロは声を発することも身動きもとれなくなった。
「なんで動けないか不思議ですか?」
少女はふと儚げに微笑むと、動けないクロのポケットから鍵を取りだす。
「それは、私が"化け物"だからですよ?」
その鍵で、牢の"扉"の鍵をあける。
「私、まさかクロさんに嘘つかれるとは思いませんでした。」
少女は鍵をクロのポケットに戻すと、微笑みを浮かべながら言った。
「窓口の鍵しか渡されていないなんて嘘。祖父しか鍵を持っていないなんて嘘。だってこの鍵、全部開けられるもの」
少女は微笑みを消し動けないクロの顔に手を翳(かざ)すと、冷たくいい放つ。
『忘却』
今まで石のように動かなかったクロは、その瞬間、何かが途切れたかのように倒れた。
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