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海が俺を見る。
「いいんじゃねえの。今まで一人暮らしだったんだから、もうちょっと兄ちゃんの傍にいても罰は当たんねえと思うけど。」
海はにこっと笑った。
すげえいい笑顔。かわいい奴だなっと思ってしまった。
同時に、さすがだな、といつものように感心する。
俺の気持ちをよく察している。俺が出て行きたくないことをさっきまでの会話で見事に読みとってる。
相変わらず俺のことが大好きってわけなのかな。自惚れ過ぎかな。
海にもいずれ彼女が、もしかしたら彼氏かもしれないけれど、ができるだろう。そしたら俺はそれを素直に祝福できるのだろうか。
もちろん今の時点では祝福するつもりでいる。けれど、俺は自分で思っているよりも執着心が強いのかもしれない。独占欲というのだろうか。いや、でも兄貴のことで和泉さんに対して嫉妬したりはしない、と思い直す。だから独占欲とは違うと思う。だったら、大丈夫かな。
「正也?大丈夫か?」
海が俺をじっと見てる。
「え。ああ、大丈夫。ごめん、なんか考え込んじまった。はは。」
俺は海を目の前に何を訳のわからんことを考えてんだ。
「なんだ、そんな悩むほどなのか?」
「え、いや、別に。」
「実は居辛いとか?」
「それはないよ。元々和泉さんは俺と兄貴の後見役だから。」
「そうなんだ、後見人か。」
「うん、俺もこの前まで知らなかった。うちの両親がいない間の保護者なんだって。」
「そうだよな。二人とも未成年だもんな。」
「和泉さんってちょっと恐そうだけど。」
「うーん、そうでもないな。頼れるお兄さんって方が俺のイメージかな。あれで俺が病気の時なんかすげーやさしい顔してくれんだ。」
「そうなのか、キツそうなできる人なイメージだけど。」
「組織内ではかなりキツイ人で通ってるみたいだけど、俺達にはやさしいよ。うちの親父とは兄弟みたいなもんだから、俺達のこと可愛がってくれてる。兄貴なんて特に。」
「和也さん?そういやいつも一緒にいるな。」
「兄貴の方も和泉さんにべったりだけどな。あの二人は仲がいいんだ。」
「そっか。まあ、確かに仲よさそうだよな。いつもなんだかんだ楽しそうだ。」
「だろ。」
だから、そういう意味では居づらかったりはするんだけどね。
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