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「でも、もし和泉さんとこ出る気になったら、俺のアパートの近くに来いよ。おまえの大学にだって充分通える範囲だろ。」
「ああ、そうだな。」
京も一緒だけどな。
その後二人でゲーセンに行ったり、服を見たり、海の新生活用品の下見をしたり、さいきんいつもこんな感じだ。
お互い口には出さないけれど、社会人と学生で生活が変わってしまえば、やはり一緒に遊べる時間がへってしまうだろうと気にしているのだ。
それからもほぼ毎日のペースで海と放課後に遊んでいた。ときどき、他の連中が合流したりはもちろんあったが。
風呂から出てベットに横になっていると、京が帰ってきた。
「おかえり。」
「ただいまー、疲れたぁ。」
そう言って京はベットに倒れ込んだ。
珍しく大人の姿をしている。この姿は久々にみる。仕事上そうならざる得なかったのだろう。
「大丈夫か?」
「全然だめ。俺にも限界ってもんがある。」
京はうつ伏せに倒れて、目を閉じている。
絵にかいたような端正な顔。子供の姿をしていると少女のようだが、大人の姿になると、綺麗でも男だとわかる凛々しさが備わる。
俺は手を伸ばして、京の頭を撫でてやる。
「なんだよ。やさしいじゃん。」
「俺はいつもやさしいだろ。」
「相手してやりたいけど、今日はだめだ。眠い。」
「そんなんじゃねえよ。いいから寝ろよ。」
「そうなのか。残念。」
「なに言ってんだ、ばか。」
京はすぐに寝息を立て始めた。
京が眠ったので俺も寝ることにした。
夜中に寝苦しさを感じて目を覚ますと、俺は京の腕の中に居た。
思わずはぁっとため息が出る。
京は寝ている間に俺のベットに移動してくることはよくあることなのだが、いつもは子供の姿なので、それなりに可愛げもある。が、大人の男となると可愛げもしない上に、シングルのベットに大の男が二人なんて寝苦しいに決まってる。
勘弁してくれ。
俺は京の腕から逃れて、空いている京のベットに移る。
なんで俺が真冬の深夜に起こされて、温まっていないベットに移らにゃならんのだ。蹴飛ばしてやりたくなったが、京が疲れていたことを思い出して思い留まった。
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