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次の朝、京は自分が俺のベットに入り込んだことは忘れて俺達が入れ代っていることに一人で驚いていた。
「なんでもいいけど、その姿のまま俺の横に潜り込むな。寝苦しい。」
「え、ああ。」
と返事はしていたがこの顔をぜったい意味を分かってない。
支度を終えて、部屋を出ようとしたとき呼びとめられた。
「おまえさ、さいきん」
「何?」
「海に会ってるだろ。」
京が俺の方をじっと見ている。
「会ってるけど、何?」
「別に。海の匂いがする。」
「は?」
「毎日、海の匂いがする。」
「ああ、最近よく会ってるからな。」
「ふうん。」
「高校卒業したらあんま会えなくなるからな。今のうちに遊んでんだよ。お前が心配するようなことはないよ。」
俺はそう言って部屋をでた。
そういうこと気にしたりするんだ。京は嫉妬深いし、独占欲が強いからな。でも、俺のことをとやかく言う前に、おまえのほうがさっさと親父から卒業してくれよ。
キッチンのテーブルにはいつもどおり既に和泉さんがいて、兄貴が朝食の準備をしてる。
俺がテーブルについてしばらくしてから京が来た。
「大丈夫か?」
新聞を読んでいた和泉さんが顔を上げて京に向って言った。
「まあ、なんとか。そっちは。」
京は気だるそうに答える。
「なんとか。」
「いくらおまえとでも、二人ではきつかったな。」
「まあな。あそこが荒れるとは予想外だった。」
「もう勘弁してくれよ。」
「ああ、気を付ける。」
そういって和泉さんは京の顔をじっとみた。
「休むか?」
「え、なに?おまえは?」
「いや、このところ忙しかっただろう。少し休んだ方がいい。俺もオフィスだ。」
「そんならお言葉に甘えて。」
「ああ、そうしてくれ。なにかあれば呼び出すかもしれんが、極力避けるよ。」
「おお。」
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